2016年 第一回定例会報告① 「認知症にやさしいまちづくり」について
2月19日から3月23日まで、第一回定例本会議が行われました。
今回は、「認知症にやさしいまちづくり」についてと、「情報公開及び個人情報保護に関しての審議会」の設置について質問しました。
まずはじめに
「認知症にやさしいまちづくり」とは?
長寿の人が認知症と付き合い、住み慣れた地域、自宅で生活環境を変えることなく最期まで自分らしく暮らすことが出来る地域社会を目指すことです。
2013年策定の「オレンジプラン」に、新たな項目を加わえた「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が、昨年1月に策定されました。その項目のひとつに「認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進」があります。
高齢者の約4人に1人が認知症の人またはその予備軍と言われており、2012年に462万人、約7人に1人だった認知症の人は、2025年には、約700万人、約5人に1人になるという推計が出ています。認知症は、長寿社会においては多くの人が「いつかはたどる道」です。今後は、認知症の人を単に、支えられる側と考えるのではなく、認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるような環境整備が必要になります。
その基盤は何といっても地域コミュニティです。
しかし、東京のような大都市では見守る側の地域住民も知らない人同士である場合が多く、また交通網の発達により誰もが容易に遠くまで行くことができるなど、地方とはまるで異なる状況にあります。
それでは、このような見守りが難しい環境にある中「認知症ケア」をどうしたら進めていくことができるのでしょうか。認知症にやさしい地域づくりには、周囲の力・協力が不可欠です。そのために認知症サポーターを養成する「キャラバンメイト」を増やし、1人でも多くの「認知症サポーター」の講習を受け、認知症を含む高齢者を理解する人が増やしていくことが大切です。
また、登下校時も含め地域で認知症の人に出会う機会も多いと思われる中学生が、養成講座を受講し知識を得ていれば、適切な声掛けが行える強い味方となりえます。江戸川区では、一人暮らしを含む熟年者世帯の話し相手として月1回程度自宅を訪問し、世代間交流を深めている中学生のボランティア「ジュニア訪問員制度」も昨年から始まっています。全ての中学校において「認知症サポーター」養成講座を実施してはどうかということを質問しました。
答弁は「これまでに数校で行ったことがある、高齢者を理解することは大切だと思う」のみでした。
2007年、歩いている途中で列車にはねられ死亡した認知症の90代の男性の遺族に対し鉄道会社が、損害賠償を求めた裁判の判決が注目されました。老老介護の家族やケアプランを立てるケアマネジャーなどの責任が問われるようなことになれば、かつてのように、認知症の人を拘束する事態に逆戻りすることが懸念されたからです。判決では、賠償はもとめられませんでした。
警察庁の発表では、2014年の認知症高齢者行方不明受理件数は全国で10783人、そのうち死亡発見は429人でした。そして、厚生労働省が同年6月、初めて実施した高齢者等行方不明者調査によれば、都内では江戸川区の身元不明者が8名と最も多かったという結果が出ています。区内の認知症の人を含む高齢者の行方不明者の人数や対応を質問しました。
答弁は「現在区が把握しているのは、一人。東京都と連携して捜索している」ということでした。
行方不明になるということは、身体はまだまだ元気であり、地域での適切なケアや見守り、声をかけることが出来ていれば、こうした事態を未然に防ぐこともできるわけです。昨年の介護保険の改正では、特別養護老人ホームの入居基準が要介護3以上になり、軽度の人たちは自治体の地域包括ケアシステムの中で、市民の協力も得ながら支えることになりました。地域で認知症の人を含む高齢者の見守り体制を構築するために、江戸川区でも準備がすすんでいますが、さらに区民が気づくように、様々な対策を行って欲しいと思うものです。
認知症であっても、外出や買い物など「行きたいところに行って自宅に帰る」。こういったこれまで通りの生活を送りたいと思うのは誰でも当然のことです。しかしその一方で、行方不明になるリスクも増えてきています。そうならないようにしようと、都内でも、介護事業者や市民などと連携して「認知症SOS模擬訓練」を行う自治体が出てきています。
江戸川区でも、例えば学校区を一つのエリアとして、認知症サポーターなども含めた、区民主体の「認知症SOS模擬訓練」を行ってみてはどうかと提案しました。当事者を探し出す難しさを実感でき、「声かけ」など、その対策を共有すると同時に、「関係ない」と思っている人たちへの意識啓発にもつながると思います。
答弁、「地域主体でやっていただ区のであれば支援はしたい」というものでした。
また、自宅での生活を支援する方策として、新オレンジプランのカギとも言われている「認知症カフェ」があります。
医療・介護の専門職が滞在し、認知症の本人と家族の孤立を防止するものです。地域住民との社会交流など、認知症に関する地域の共助としての取り組みが期待されています。「カフェ」という温かい雰囲気の中で、日常的な相談とはまた違った話ができ、本人・家族が、共にくつろぎのひとときを過ごすことができる居場所、そして、相談機能を備えた「認知症カフェ」の設置を要望しました。
答弁「社福などが行っているカフェが8ヶ所ある」というものでした。私たちは、グループホームなどで行っているカフェではなく、地域のNPOや市民団体などが「認知症の方とその家族がほっとできる場所」としてのカフェを作ることを望むものであり、そのための支援が必要であることを区に質したのです。
認知症は治らないからこそ「ケア」という名前がついています。
その「ケア」を行うための指標となるものに「認知症ケアパス」があります。その人の生活機能障害の進行に合わせ、いつ、どこで、どのような医療・介護サービスを受けることができるのか、具体的な機関名やケア内容などを示すもので、多職種連携の基礎ともなっています。「認知症ケアパス」の作成と普及を求めました。
答弁 現在、作成中ということでした。
当事者にも参加して使いやすいものにしてほしいものです。