地方自治法の改正に反対します。廃案にすべきです!

5月28日に開かれた衆議院総務委員会で、感染症や災害など重大な事態が発生した際に、国が自治体に必要な指示ができる特例を盛り込んだ地方自治法改正案が、国に事後報告を義務付ける修正を加えたうえで可決されました。そして、30日衆議院本会議で可決され、参議院にかけられることになりました。
この法律は、「地方分権一括法」といわれ、1999年に成立し、2000年4月より施行されている「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」のことです。戦後、自治について紆余曲折した地方分権改革に終止符を打ったものです。
国から自治体へ権限や財源を委譲したり、国の自治体に対する関与を減少したりすることができるものになっており、地方自治体の自治を認めるものでした。
この改正が施行されると、
「重大な影響を及ぼす事態」と国が閣議決定すれば、特例的に地方公共団体に対し、「補充的な指示ができる」ことになります。
これまで、国と地方自治体とは、対等・協力であった体制の位置付けが一変して、国の指示に従わなければならなくなる事態にもなりかねないわけです。
新型コロナ感染症の流行時、故安部首相から「全校一斉休校」が発令されました。ほとんどの自治体はこれに従いましたが、地域の状況を考え判断し休校にしなかった自治体もありました。自治を考えれば当然のことです。どんな事態が起こったとしても、その状況を一番よく知り、判断できるのは、住民の身近にある地方自治体です。その自治体の自治を飛び越えて、対等な関係を壊すような法改正には、反対します。
「国の関与を強め、自治・分権を後退させる地方自治法改正案に反対します」

2024年4月25日

東京・生活者ネットワーク

生活者ネットワークは、市民自治・分権型社会の実現をめざし活動する地域政党です。

2000年に地方分権一括法が施行し、国と地方公共団体は対等・協力の関係となりました。その後、不充分ながらも国から自治体への権限移譲が進み、独自のまちづくりにつなげてきた自治体もあります。

ところが、第33次地方制度調査会の答申を受けて、今期第213回通常国会に提出されている地方自治法改正案は、自治・分権の根幹を揺るがし、国と地方公共団体の対等関係を壊すような内容になっています。この10年程、政権に就く自民党が中央集権化へと舵を切り、地方分権を逆流させるなか、生活者ネットワークとしてこの地方自治法改正に断固反対するものです。

改正案は、大規模な災害や感染症のまん延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生、または発生するおそれがある場合に、特例的に「国の補充的指示」として、国会を経ずに閣議決定により、国が地方公共団体に必要な指示ができるというものです。

改正の理由は、新型コロナウイルス感染症の流行時に対応できなかった課題への対策とされています。しかし、発生した課題に対する検証や分析が不充分なまま、国が自治体に指示しても問題は解決しないばかりか、事態はますます混乱するだけです。地域の状況を迅速に把握し、必要な対応を判断できるのは自治体であり、新型コロナウイルス感染症流行の際に首相の独断で決められ、全国を混乱させた一斉休校の例を見るまでもなく、必要なのはむしろ自治機能の強化です。

そもそも、災害や感染症まん延対策は現行の地方自治法の一般ルールで定められているように、個別法により国が関与することが充分可能です。「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の定義が曖昧なまま、国会を通さず閣議決定だけで、国の指示を認めていくことは、地方自治の本旨にそぐわないばかりか、法定主義をないがしろにし、国会軽視、民主主義の後退ともいえる事態です。

また、改正案には、地域住民の生活サービスの提供に資する活動を行う団体を市町村長が指定できることとする規定も含まれています。地域で活動する市民団体との連携・協働は、自治体が自治体議会を含めて市民とともに議論する課題であり、法で規定すべきはありません。さらに、特定の団体に恣意的に支援することも可能となりうるもので、市民自治の観点からも大きな課題があります。

以上、地方自治法改正案は団体自治・市民自治いずれの視点でも今後の自治・分権の行方に大きく影響するものであり、国会は自らの役割を直視し、法案の問題を明らかにし廃案とすべきです。

日本弁護士連合会も反対の声明を公表しています。
ローカルイニシアティブネットワーク(LIN-NET)
「分権と地域主権」に逆行する地方自治法「改正案」に対する声明