フィンランドの母子保健ネウボラ ~~助産師さんの視察報告~
「ネウボラ(Neuvola)」
日本でも数年前から各自治体での導入が始まってきていますが、フィンランドのネウボラは、日本のそれとは違うもののようです。ネウボラとは、フィンランド語で「相談する」という意味だそうです。
フィンランドのネウボラは、妊婦検診、母子保健、家族計画、乳幼児健診といった業務があり、妊娠初期から就学前までの母子を対象とした無料の保険センターを指し、保健師・助産師・医師・心理士・ソーシャルワーカーが連携して、子どもの発達や家族関係、メンタルヘルスに重点をおいて包括支援を家族中心のアプローチを行っています。
江戸川区松島にある「まつしま病院」の助産師、幸崎若菜さんのフィンランドの視察報告を伺うことが出来ました。
まつしま病院は「女性と子どもにやさしい病院づくり」を掲げている病院です。そして幸崎さんは、その病院に勤めていることを、心から誇りに思う看護師さんあると共に、「ユースウエルネスKuKuNa」の室長でもあります。
第一声は、「フィンランドの人と日本の人の大きな違いは、フィンランドの人は”税金を納めたい!”と思っています」でした。フィンランドでは、「税金を納めることで、国が保障してくれる」という確たる信頼があるそうです。
日本はどうでしょうか?
残念ですが、「税金を納めるより、老後のために貯金しなくちゃ!」と思う方が大部分ではないでしょうか。選挙の投票率もフィンランドは85%、日本は衆議員選挙・参議員選挙どちらも日本全体では53%くらいになっています。江戸川区の今年6月に行われた東京都議会議員選挙の投票率では39.65でした。この数字から見ても、国や行政は、自国民からあまり信頼されていないと言えるのではないかと思います。
| 面積 | 人口 | ||
| フィンランド | 約33.8万㎢ | 約558.4万人(2023年) | |
| 日本 | 約37.8万㎢ | 約1億2380万人(2024年) | |
| 江戸川区 | 約49.09㎢ | 約70万人(2025年) |
フィンランドの面積は日本よりやや小さく、人口は兵庫県くらいのようです。
<ネウボラの成り立ち>
1920年初頭に民間有志による母子保健の取り組みが原点となり、1922年に8か所のネウボラが開設される。
1949年、助産師の自宅訪問支援事業が開始され、各地域のネウボラは母子の通いやすい場所に開設されるようになった。現在のネウボラの運営は保健師が中心となり、医療主体から生活主体に変化している。
2000年以降は、支援の連続性と一貫性が求められるようになり、妊娠期から周産期に対する「出産ネウボラ」と、周産期後から就学前(0歳-6歳)までに対応する「子どもネウボラ」を統合して、「出産・子どもネウボラ」とする動きが拡大し、現在、全国には850か所に開設されている。
<妊婦検診>
日本とは医療制度が異なり、妊娠が分かった女性は、ネウボラに行く。
子どもが小学校に入学するまでの母子を、ずっと同じ保健師・助産師が担当する。保健師・助産師は国家資格で、異動はない。
※利用者にとってはワンストップの拠点で、同じ担当者と信頼関係を築きながら必要な支援を受けられる仕組みになっており、妊産婦にとって、とても安心な制度と言えると思いました。
妊娠が確認されると証明書を発行され、証明書を社会保険庁へ提出すると母親手当が支給される。
妊娠中のネウボラ訪問は平均10回程度。超音波検診は、中央病院で行う。
※右の写真は、お土産の品々。月経カップや避妊薬など。
生まれてからは、新生児期・銃時期の定期健診、予防接種プログラム、授乳や離乳食、発達段階に応じた育児指導等や家族全体の総合検診があり、両親と子ども、家族全員との面接を行い、家族関の様子(DV等)も含めて支援をしている。
子育ては、母親だけの役割ではなく、父親の積極的な参加と家族全体のウェルビーイングを支援することが大事であるという考え方や本来家族だけで行うものではなく「社会全体で担うもの」ということや、子どもが育つ段階で家族内で行われてしまう「暴力」が、子どもに大きな影響を与え、社会に与える損失は大きいという考え方があり、母子の健康を守ることはもとより、家族全体の支援も行っている。
<感想>
生活者ネットワークも、以前から「子育て介護は、社会の仕事」というスローガンを掲げて活動してきています。
核家族化が進み、パートナーや祖父母、近所のサポートもなかなか受けれない子育てとなり、「ワンオペ育児」という言葉が流行ってしまうほど、一人での子育てが当たり前になってきています。親子が孤立しないように、両親のストレスが子どもへと向かわないように、様々な角度からの支援が必要だと思います。
江戸川区でも「妊婦検診」や「ぴよママ相談」など支援はありますが、一つ一つのバラバラな支援であるため、受け手によっては届かない場合も生じています。フィンランドのネウボラのようにワンストップで、妊娠、お産からバースコントロール、子どもの育ちまで全ての相談ができ、しかもずっと一人の人が伴走してくれるほど心強いものはないと思いました。


※オープンユースは、幸崎さんが室長をしている「ユースウエルネスKuKuNa」のイベントです。
