2024年江戸川区第2回定例会 3/3公共施設から流出するプラスチックの削減について
公共施設から流出するプラスチックの削減について
気候変動が及ぼす海面の水位の上昇、世界的な異常気象、局地的な豪雨などの対策には、排出される温室効果ガスの削減を目的に「第2次エコタウン推進計画」が策定されており、更に進みつつある気候変動には、
「みんなで『いまの生命(いのち)』と『みらいの地球』を守る計画」(江戸川区気候変動適応計画)を策定し取り組んでいます。さらに強化を図るため、2050年の脱炭素社会の実現に向けて、2023年に2050年温室効果ガス排出を実質マイナスに取り組む「江戸川区カーボン・マイナス都市宣言」をしています。
そうした中でのプラスチックの使用、特に人工芝を使用することは、「江戸川区カーボン・マイナス都市宣言」に反するものではないかと考えます。 人工芝の原料はプラスチックであり、プラスチック1kgは、原油採掘から流通、製造、処分までの各段階で5kgものCO2を排出します。そして素材であるポリエチレンやポリプロピレンは、日光により劣化すると、メタンなどの温室効果ガスを放出します。
また、人工芝の葉の部分には、ノニルフェノールなどの内分泌攪乱作用のある物質が含まれていることや発がん性物質を含むPAHs(多環芳香族炭化水素)も多く発生させるなど、有害な化学物質が含まれているといわれており、ヒト、特に子どもの成長を妨げることなどが懸念されています。
グランドに投入されているゴムチップ充填剤には、重金属を吸着・濃縮するため細胞毒性が高くなることがわかってきました。
人工芝については、費用対効果や人体に与える影響など、これまで議会でも議論されてきていますが、目先の利益ではなく、2100年に向けた「2100年の江戸川区 共生社会ビジョン」の「環境とともに生きる」にあるように、水の都として江戸川区の環境を守るためには、今から徹底した「守るための行動」が必要だと考えます。
多摩市では、2020年7月に民間団体の協力による、多摩市内の河川4か所において「マイクロプラスチック流出実態調査」を実施しています。4地点全てで人工芝、コーティング肥料、発泡スチロール等から発生したマイクロプラスチックが見つかっています。そこで、2021年には多摩市屋外スポーツ施設管理更新計画を策定し、テニスコートにおけるマイクロプラスチック対策を研究し、実施しています。そして2022年には、人工芝製造企業と共同で実証実験を開始し、その実証実験結果を踏まえ、市は今年3月「テニスコート砂入り人工芝におけるマイクロプラスチック流出抑制対策ガイドライン」を公表し、人工芝の種類、マイクロプラスチック発生状況、流出抑制対策の方法を詳しく説明しています。
マイクロプラスチックの発生状況では、メカニズムとして、紫外線による劣化やプレーヤーがコート内を動くことによるスライド摩擦で、人工芝の毛先が徐々に削られることがあげられており、設置13年経過後のテニスコートにおいて、ベースライン付近で残存する芝の丈は、当初19ミリあったものが、残り 1/4の5ミリになっていたと報告しています。また、2020年12月に人工芝の張替えを行ったテニスコートでは、継続的に発生状況を確認している中で、2024年2月には摩耗によるマイクロプラスチックの発生は確認されていませんでした。
継続的に発生状況を確認している中で2020年3月に人工芝化を行ったテニスコートでは、2022年10月に開始した実証実験においてマイクロプラスチックの発生が確認されています。このことから人工芝設置初期は、劣化が進行しておらず、耐久性が高いことから流出が発生していないものと判断する一方でしています。しかし、つまり、設置後2~3年程度経過したのちに、摩耗によるマイクロプラスチックの発生が考えられるということです。
製造企業や原材料により異なる、という見解はあるものの、本区に照らし合わせると、10年以上張り替えていない人工芝も多く、マイクロプラスチックを多く発生させていると考えることが出来ます。
流出抑制対策については、「集水桝は、排水溝に流れ込んだ水が通過するため、効果が期待できるものの、排水阻害時リスクを低減する対策が必要です。」とありました。
本区では、2022年に人工芝を整備した西小岩小学校、葛西ラグビースポーツパークは、どちらもマイクロプラスチック対策などの環境配慮がなされていますが、それでもマイクロプラスチックが飛散・流出している現実があります。先日葛西臨海球技場と葛西ラグビースポーツパークを視察しました。雨の日でしたのでちぎれた人工芝が、マイクロプラスチックフィルターGTを取り付けた排水溝から溢れていた様子、靴についてしまう様子など偶然にも観察することが出来、マイクロプラスチック専用のフィルターを使用していても、それだけでは限界があることが分かりました。多摩市のガイドラインが示すように、流出抑制の対策は何重にもとる必要があるということです。
一般社団法人ピリカの2020年度の全国の河川における調査では、流出マイクロプラスチックのおよそ20%が人工芝であることを特定しています。人工芝は、100地点中、75地点で確認され、中には50%を超えている河川も複数あったということです。人工芝については、国内234か所を対象に調査が行われており、その結果、スポーツ用途の施設の85%以上で人工芝が流出していることが確認されています。庭などのスポーツ施設以外の施設からの流出は23%であったことからも、スポーツ用途の施設からの流出リスクが大きいことが分かります。川や海への流出が一番多いという結果の出ている人工芝を使用するのであれば、本区として、流出しない方法を考え、対応したうえで使用する必要があると考えます。特に、2020年以前に設置されているテニスコートの排水溝や集水桝には、マイクロプラスチック用のフィルターを使用していない場所もあります。早急に対策を整備する必要があると考えます。
人工芝の使用は、安全性や稼働率の高さ、費用対効果などのメリットも言われていますが、みらいの地球を守ると謳い、脱炭素に向けた取り組みの推進などもしている本区が、海を汚すプラスチックをあえて選定することに疑問を覚えます。
人工芝を使用している臨海球技場、葛西ラグビースポーツパーク、各テニスコート等の人工芝の流出対策について、まだまだ不十分と考えます。人工芝を採用することについての考え方と現在使用している人工芝の張替えの頻度、流出対策について質問しました。
また、本区では学校の校庭にも人工芝を使用しています。学校改築や苦情対応での校庭の芝生化を考える際には、先に申し上げましたように、地球環境にも、子どもたちの人体にも悪影響を及ぼす人工芝ではなく、天然芝を用いるべきと考えます。近隣からの砂埃などクレーム対応について、人工芝ではなくクレイ系舗装と天然芝を一部使用するなどの基本的な考え方を示している自治体もあります。近隣への対応ももちろん必要ですが、子どもたちの健康が第一であり、悪影響があると考えられるものについては、「使用しない」とすべきです。改めて校庭整備についての考え方を示す必要があるのではないかと考えます。
校庭の整備についての考え方と校庭整備の指針の作成を求めました。