「あまみず社会」とは ~ グリーンインフラ学習会に参加して

島谷幸宏先生(河川工学 九州大学大学院教授)の「あまみず社会~グリーンインフラ」の学習会に参加しました。

あまみず社会とは、雨水を浸透や貯留を行ってから流す、一挙に下水道や川に入れない分散型の水管理をしていく社会。水と緑による有機的な社会です。

雨は、生活の中で全て地下に潜り下水管へ集められていますが、私たちは、水の循環を意識しないで生活しており、目にすることがないこともあり、問題はあっても、認識されていません。現在の都市の雨水は、雨水桝を通って下水に流れ、下水処理場を経て海に流されていて、東京23区では一部を除いて雨水も汚水も一緒に処理されています。

ほとんどの地域が豪雨などで雨水の量が1時間に50ミリを超える場合は、あふれてしまいます。

◎杉並区では「善福寺川を里川にカエル会」が発足しました。汚れた善福寺川をほたるのくる里川に変えることを目標に、川の掃除やイベントを行う活動です。

里川とは?「定義はない」ということでしたが、世代を超えて、人のつながりを得られる川ということだそうです。そして、その姿を考えている会を発足されたそうです。

川とマチのつながり(「空間のつながり」とよんでいるそうです。)

今の川は、マチとのつながりを失ってしまっている! コンクリートや柵で覆われた川は、とても窮屈そうに見える。川とマチとにつながりを再生し、川をもっと自由にすることができれば、川はより魅力的に、人から愛される存在になると考えているそうです。

学習のあと子どもたちと川の掃除をすると、たばこのポイ捨てが多いとのことでした。そして、子どもたちに「子どもは、ごみは拾えます。合流式の下水道は大人にしか直せません」と言われてしまったそうです。

合流式の下水道は、下水道が許容を超えてしまうと、汚水と一緒の水を川へそのまま流れてしまいます。下水への負担を減らすために、少しでも雨水の流入の時間を遅らせ津ために、そして川が氾濫するのを防ぐために、遅らせるために、雨水をためて利用しなるべく下水に流さないことがあふれさせない方法に、各個人宅でも樋の途中をきって、雨水をためることを推奨に広めておられました。

※東京都は、ほぼ公共の下水道が完備されていますが、ほとんどが50ミリ対応の合流式の下水道。そのため、50ミリを超える豪雨の場合はあふれ、未処理の汚水がそのまま、川や海に流されています。2013年に「豪雨対策下水道緊急プラン」を策定し、親水被害の軽減を目指し、各自治体で対策を講じているところです。

そうしたことからも、グリーンインフラ(雨水貯留浸透+緑化)という考えたが、世界でひろまってきています。

土地にはそれぞれ、雨水を浸透させる力があり、地表によって左右される

アスファルトでは  0mm/h

グランドや裸地  7mm/h

芝地           22mm/h

前庭植栽       102mm/h

常緑林         144mm/h

農地           215mm/h

落葉樹林       200mm/h

都市においては、容易に農地や林にすることはできませんが、少しの土地でも土を残したり、雨水をためることはできます。福岡市で2017年2月18日に開所したのが、「あめにわ憩いセンター」(みずすまし庵)です。 6個の水がめ(0.35t×6)で雨水をため、散水や防災用の貯水とし、屋根に取り付けた太陽光温水器で温めたお湯は足湯に使う施設です。

①かめに溜めた雨水が手軽に使える。(庭に配管した給水栓は3カ所)②庭は、楽しい工夫とともに治水の理念に基づいて構成されている。ということがポイントとされました。

アメリカで始まった「グリーンインフラ」

・1990年代半ばに提唱される。欧米では2000年代中盤ころより始まる。

・アメリカでは、費用対効果が高く、持続的で環境にやさしい雨水管理のアプローチと定義している。

・ヨーロッパ 地球温暖化対策と生態系の分断

・近年、生体を活用した災害リスク軽減策が世界的に注目を集める。(Eco-DRR)

Eco-DRR:生態系を生かした防災・減災

 

なぜ欧米でグリーンインフラなのか?

脱温暖化:CO2の削減やヒートアイランド減少(気候変動による豪雨)

洪水対策:洪水の抑制(雨水貯留)

環境対策:生活の質向上、健康増進、大気・水質浄化→自然資本をこれ以上劣化させない

生物多様性の保全

食料の安定供給:生態系の安定性

(食料の安定供給、きれいな水、安定した気候、洪水の抑制)

経済的価値:不動産価格上昇、安価

複合的価値や多機能、持続可能性(コスト、耐久性)が見込まれるため。

 

グリーンインフラとグレーインフラの対比(コンクリート構造物に頼った従来の雨水管理)

グリーンインフラ    ⇔    グレーインフラ

自然豊かな景観     ⇔    自然の乏しい景観

多機能         ⇔    単機能

参加型の取り組みが必要 ⇔    必ずしも必要とない

標準化困難       ⇔    標準化が可能

効果発揮に時間がかかる ⇔    すぐに効果を発揮する

大きな敷地       ⇔    小さな敷地

機構変動などの影響   ⇔    経済的影響、故障

環境負荷が小さい    ⇔    環境負荷が大きい

維持管理費が安い    ⇔    維持管理費が高い

規模拡大コストが小   ⇔    規模拡大コスト大(全体を作り変え)

持続可能        ⇔    減価償却

 

EUの政策

2013年5月6日に「グリーンインフラ戦略―ヨーロッパの自然資本をより豊かにするために」のEU通達:グリーンインフラを用いて、劣化した生態系の15%を再生することで、2020年までにEU域内の生態系とそのサービスを維持・強化する。

【EU全体のエコロジカルネットワークから得られる生態系サービスの価値は28~40兆円】

※グリーンインフラは洪水を防ぎ、CO2 を固定し、蒸発散によりヒートアイランドを防ぎ、、大気汚染を抑制し、健康増進に役立ち、不動産価値を高める

アメリカでは都市の雨水管理システムをグリーンインフラに変えた

・コストが安い

・導入が早い

・都市がきれいになり、都市間競争に勝てる

(NYでは、NPOにお金をつけて行っている)

・道路の水を花壇に

・スポンジパークでは、道路排水を運河に入る前にいったん受け止め、浸透させて浄化

 

※参加して

江戸川区は、川と海に囲まれたみどり豊かな区ですが、反面水害には弱い0メートル地帯の多い地域でもあります。下水道を50㎜対応から大きくするのは大変な費用が必要ですが、区民一人一人が、樋をきり、雨水を溜めて花壇の水やりや被災時に多目的に使用するすることは、小さなことかもしれませんが、1軒、10軒、100軒と広がり、水害の抑制にもつながります。雨水を溜めてはどうかと改めておもいました。