東京都内自治体の電力調達の状況に関する調査2020報告会

自治体の電力調達と気候変動政策 ~環境配慮・地域経済循環のために~

電力調達の状況に関する調査報告書

◎東京都内自治体の電力調達の状況に関する調査2020報告会がありました。

主催:パワーシフト・キャンペーン運営委員会

 (東京・生活者ネットワーク、国際環境NGOグリーンピース、国際環境NGOFoE Japan)

電力システム改革である電力小売り全面自由化を機に、全国で多数の新電力会社が発足し、電力小売りをめぐる状況が変改している中で、自治体による電力調達は、規模も大きく重要な役割を持っています。昨年の「自治体の電力調達の状況に関する調査」に続き、東京都内の自治体を対象として、同様に電力調達の状況やその方針を可視化し、望ましいあり方を考察することを目的に調査を行ったものです。(http://power-shift.org/jichitai-tokyo-2020report/)

 

調査対象:都内62自治体(環境担当部署・調達担当部署)

回答率 :100%

調査内容:本庁舎の電力調達(2011年~2019年度)、電力調達方針、

     再生可能エネルギーに関する方針

調査方法:調査票をメールで送付し、メールで回答を得た。

     必要に応じて、詳細に関する電話ヒアリング等を実施。

調査期間:2020年2月~4月

調査結果:http://power-shift.org/jichitai-tokyo-2020report/

 

東京都内の自治体の状況を比較することができたことは、大変有意義であると思いました。それぞれの自治体が、さまざまな事情を抱えながらも

今回の調査で江戸川区は、環境配慮方針を持ち、再エネ割合を高く評価する基準で導入を進めていることや、温室効果ガスの削減目標を国の目標より高い「2030年度までに、2013年度比で40%削減する」という高い目標の「第2次エコタウンえどがわ推進計画」をもち、積極的に再生可能エネルギー調達につなげていることこを高く評価を受けました。

現在、本庁舎の電力調達は、東京電力エネジーパートナー株式会社となっています。本年までの3年契約となっており、契約時点では、価格の安い会社ということで選定されていました。今年の契約更新では、より再エネ割合の高い会社からの供給となるようチェックしていきます。

 

以下調査参加者からの報告

■国際環境NGOグリーンピース 鈴木かずえさん

 気候変動が深刻化しており、台風・熱波・集中豪雨など、100年に1度の災害が毎年来ていて、お米の収穫高も減少している。東京は、気温が2度上昇すると海面は6mくらい上昇することが推測されており(→江戸川区は水没)このまま対策を取らないと、2030年以降海面が上昇していく可能性可性がある。現在CO2の排出量が減っておらず、脱炭素化をする必要がある。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では、「約10年でCO2を半減させなければならない。」としており、解決策として省エネと自然エネルギー100%を目指すことを提唱している。

世界の現在の状況は、318都市が2030年までに100%を目指しており、114都市では2050年までに100%を目指す目標を持っている。すでに、58の都市では自然エネルギ―100%を達成している。

そして、世界では「気候緊急事態宣言」を1755自治体が行っている。

 例えば、バンクーバーでは、2030年までに55%を自然エネルギー由来のものにし、2050年までに100%にすることを目標にしている。市民参画を進め、ビジョンが明確で、アクションプランと進捗状況が分かりやすく行っている。コペンハーゲンは、カーボンニュートラルを行い、自転車の利用を奨励している。

 また、環境に関わる仕事を増やしていくという、グリーンジョブでは、「RE100プロジェクト」を、244企業が行っており、この244企業の電力の合計は、インドネシアの電力事業を超えると言われている。今や、英国バンクは、気候変動を無視する企業は倒産するだろう!とまで言っている。(→チャンスである。)

 ※グリーンピースでは、このほか「グリーンリカバリ―事例集」をまとめた。

【解説&世界の事例つき】グリーンリカバリーってなに?

 

■品川・生活者ネットワーク吉田由美子さん~自治体にどのような働きかけを行ってきたか~ この調査を議員のいる34自治体と7自治体に依頼した。自治体の電力調達は、経理課の担当となるが、考え方については環境部にも参加してもらって回答してもらうようにした。自治体間の違いを確認することができた。

 この調査結果をもとに都や国に要望を出していきたい。そして、市民と懇談の場を持つことや小さな学習会、報告会を行いたいと思う。また、政策として、常に市民とともに確認していくことが必要。

 

■FoE Japan 吉田明子さん

2019年の時は140の自治体で行ったが、今年(2020年)は、東京都内62自治体で行った。

2011年以降原発が止まり、化石燃料由来の電気となり電気料金が上がったことで、新電力が広まった。現在16%と広まってきたが、大手電力会社が、価格の値下げを行ってきていることで、一次は新電力から調達していた自治体も、再び東京電力からの調達となってしまったところも増えてしまった。

2007年に環境配慮調達の見直しがあり、自治体の半数は、裾切方式(点数換算:二酸化炭素の排出量の基準+最低価格落札方式)を採用しているが不十分だと考えている。 

工夫をしている自治体

   世田谷:点数の工夫+FIT電気を含む  江戸川:点数の工夫+FIT電気を除く 

   吹田市:FIT電気を含む (CO2排出量は考慮しない)   羽村市:合算(定数と価格)

   東京都:総合評価落札方式(独自)2019年度都庁舎版RE100、

・自治体新電力を設立しているのは全国で40か所(地域の地産地消を行う)→随意契約

 所沢市・電力調達委員会を設置、株式会社ところざわ未来電力から調達。

・新電力は、地域経済を活性化させる、経済循環を促進させる、再生可能エネルギーを循環させるという意味があるが、調査では、再生可能エネルギーだけではまだ難しいという回答となった。→ 地域のビジョンの理解をしてもらいそのうえで、募っていくことが大事。

・地域内の電力の活用として、東京エコサービス(廃棄物バイオマス発電)(2006年設立 東京23区1部事務組合)を使用している自治体もあった。 

・港区は、庁舎に使用するだけでなく、事業者へも呼びかけている。また、白河市、山形県庄内町、青森平河町と連携もしている。同様に、目黒区、世田谷区も地方と連携。

・2019年度東京都は、ゼロカーボンを宣言。同様に、100を超える自治体が2050年までにCO2排出実質ゼロを宣言している。 (世田谷区、品川区など)

・連動して、再エネ100%調達を行う自治体も出てきた(世田谷など)

・8割近くが東京電力からの調達が目立った。値引き率が多きい。環境配慮の取組は7割近く行っていた。  

・気候変動政策、エネルギー政策と電力調達を関連づけることが大事

江戸川区、品川区は、40%削減の設定となっている。

・ゼロカーボンシティの提案。

・環境政策の一環として、電力調達を考え、再エネについての内容についても見直すことが大事。(非化石価値調書。FIT制度の見直し)

※自治体こそ主体的に行ってほしい。自治体新電力について、理由付けも大事。

 

■世田谷区エネルギー施策推進課 池田あゆみさん

・世田谷版 RE100の実現を取り組んでおり、環境基本計画では、CO2を25%削減の取り組をするために、みうら太陽光発電を設置した。また、自治体間連携を地方と始めた。他の区内の施設70施設もRE100とした。区内の卒FIT電力に協力することとしている。

 

■品川区都市環境部 鷺坂としふみさん

・2003年度に品川区環境計画策定し、第2次環境計画に地球温暖化対策を盛り込む。環境保全の取組には、区民・事業者とともに、行うことが大事。「みんなでつくる未来都市」 低炭素な仕事、暮らしを打ち出している。 2030年度に40%削減目標とした。環境対策推進会議を毎年行っている。各区有施設においても低炭素化を図ることにした。予算編成の基本方針の中で、環境保全、環境負荷に貢献するように明記をしている。

・清掃工場の廃熱を利用したエネルギーを大部分の学校等で使用している。

・区役所本庁舎について、から参入にあたり電力供給減の条件を付けて入札を行った。

・区有施設についても各主管課で電力切り替えを可能なかぎり行うようにしている。水力、バイオマス発電、風力など、各電力会社の特性を生かしたものとしている。現在、41の施設で、太陽光発電を行っている。

・5つの施設で自然エネルギー100%となっている。

 

■東京都環境局 地球環境エネルギー 計画課 山内まことさん

・2019年ゼロエミッション東京戦略 :世界の大都市の責務として、1.5℃を追求するとした。

 実現にむけて、具体的にまとめたもの。

  ・気候危機行動宣言:全ての都民に共感と行動を呼びかけていく。

  ①緩和策、適応策などの総合的展開

  ②資源分野(都外でのCO2排出の削減)

  ③あらゆる分野への取組:エネルギー、インフラ、+自然循環分野、食品ロスについても考えていく。

・2050年までのロードマップ(この10年が重要:2030年目標に上回るバージョンアップをしていく。この中で14項の施策を掲げている。)

※再生可能エネルギーの利用拡大策:100%、脱炭素化。

  2030年までの3本の柱①4部門、家庭部門からの排出が多くなっている。→ゼロエミッション:省エネ+再エネが重要、なるべくCO2を排出しないものを選ぶ  

・事業所について: ①新築 ②既存建物 中 ③既存建物 小  :省エネ、再エネのの設備を設置する、再エネを利用する、(条例でのしくみの中でお願いしている)

2019年夏アンケートを取った: 8割の事業所で再エネに興味があるとなっている。

   →考えているが、まだ進んでいない → RE100に向けての会議を開いた。

   ・再エネ販売メニュ―の拡大や広報を要望

→太陽光パネル、畜電池に補助金を付ける。省エネ性能を満たした住宅について、補助。

  初期費用などへの補助。

・再エネ電力へのモデル事業:再エネ電力の購入希望者を募り、購買力を高めて、お得な電力とするグループ購入の取組。(都で募集→登録→電気事業者→30%電気を確保してもらう→金額の見積もり→希望者への提示)4000数百件の応募者のうち1000数百件の契約した。

・都の施設の新設、増築の際には再エネをしていく。

・グリーン購入する。

・都庁の8割は再エネに変更できた。

都庁電力プラン→都内産の電力を使用する。卒FITを使用する。

 

 

 

◎参加者からの質問

①大きな電力の安定的な供給できる電力会社がないことについて。

→世田谷:再エネ電力が少ないということではないと思う。自治体間連携では、電力だけではなく、他の交流も生まれる。

→東京都:まったく足りていないということもない。需要が伸びれば、発電する会社も増えてくるのでは。

②太陽熱利用の促進について

→都:太陽熱について、熱は熱で!キャンペーンがあり、進めていく。

③卒FITの電力の利用を具体的に

→世田谷:1年契約の中で、卒FITは使いにくい→検討中

→東京都:今年から買取をしていく予定:もうすぐ発表できる。

④ZEBの支援について

→東京都:お金の支援はしていない。CO2の削減手法の中で考えてもらっている。

⑤再エネについて、都の中間的な目標は。

→東京都:作っていない。  ポテンシャルマップを作っている

⑥卒FITの買取について

→都:1キロワット・h 1.5円上乗せ、家庭の太陽光 ←都が契約した電力会社

以上